第274号  27年6月号  長井 一彦

 暑さ厳しい季節を迎えましたが、皆様におかれましては恙無くお健やかにてお過ごしのことと存じ、衷心よりお喜び申し上げます。
 いよいよ梅雨の季節、災害も懸念される所でありますが、この蒸し暑い日々、どうかお元気で在られますようお祈り致します。

 さて、大潟村では日々暖かい春を迎えまして、私共のメーンでございます米作り、浸種、ハウスビニール張り、種まき、有機肥料散布、田起こし、代掻きと恵まれたお天気のお陰で順調に終え、例年より4~5日早く田植えを終えました。その後の生育も順調に推移致しまして、6月半ばを迎える頃には爽やかな南の風をうけまして緑濃き青田に育つ事でありましょう。葉先を波立たせ、私の頬をなでていく稲たち、ひと時の苦労を癒してくれる季節でもあります。

 独り畦に腰を下ろし一服しておりますと、過去の出来事が思い出され、稲と語らいながら、ぽつりと洩らす私でした。それは・・・・・・田んぼの隅まで黙々と補植をやってくれた、取っても取りきれない雑草を日が暮れても頑張ってくれた、本当に苦労をかけた妻、「ひょい」と稲の間から顔を出し、手を振るような錯覚にとらわれて一心に青田の中を見ていた。突然、笑い声がしたような・・・・でも、それは青田を吹きぬける風の音、振り返っても呼んでももう姿を見ることは出来ません。何時も傍にいて面倒を見てくれたのが居ない、こうして畦に佇んでおりますと、とても寂しさを感じます。そして、思い出は懐かしく甦ってきます。

 一緒に出かける旅など面倒だと苦笑いしておりましたが、車での三度ばかりの小旅行、ドライブも思い出されます。生涯の思い出としてアルバムに収めながら、「今度は何処へ」と謎かけてくるのも妻でした。いつかゆっくりのんびり各地を巡りたい、その矢先でもありました。今更大事に大切にしてあげられなかった事を悔やむばかりの自分であります。おっと、夕方になりそうです。長い時間畦にすわって思いにふけっておりましたが、思いますに妻は「元気を出しなさい、風になって見守っているから、悲しむと私も悲しくなる・・・」と言っているに違いありません。

 今も多くの皆様に支えられ励まされ、倅に娘に助けられながらの日々ですが、老いを感じてきた人生を元気で生きてゆきたいと思っております。それがせめてもの供養ではと・・・・。

今月の一句
我が頬を そっとなでたり 青田風