第116号  14年5月号  長井 一彦

  温暖な日々が続き、季節の先走り感がありますが、いかがお過ごしでしょうか。 「あきたこまち」の種まきを4月中旬に無事終え、その後は、ハウス内の温度管理などで日々おろそかに出来ず、桜の花見も出来ないほどに田起こし、代かきと休まる日がありませんでした。間もなくすると、丹念に育てた「あきたこまち」の早苗たちの田植えが始まり、家族総出の忙しさとなります。

 それにしても時の流れは早く、この八郎潟の干拓地で迎えた春も三十余年、日が昇り萌えるポプラ並木に陽が入る時刻になれば、トラクターなどの上で疲れを癒し、懸命に頑張って来た自分に感心すると共に、様々な思いにふける事も度々あります。

 何年前か? 田植えの忙しさも一段落して、田んぼ一面緑に染まったある晴れた日、久しぶりに倅(せがれ)を連れて田んぼで遊んでいた時のことです。まだ2~3歳でしたでしょうか。私の後ろでヨチヨチ歩きではしゃいでいたのに、振り向いて見たら姿が見えません。石につまずいて転んで、田んぼに落ちてしまったのです。あとが大変です。泥水で身体を洗って家まで戻れば、女房は泣き止まぬ倅を風呂に入れて洗濯する有様。それ以来、一緒に田んぼには連れて歩く事はありませんでした。

 そんな倅も社会人10年。一昨年、私がトラクターから滑り落ちて入院した時に、生意気に「お父さんも歳かな。近いうちに僕が農業を手伝うから。」と慰めてくれるじゃありませんか。自分はまだ若い、若い連中に負けないからと自負しておりますが、女房と娘の涙ぐんだ姿を見て、情けない自分に納得と苦笑いです。
 それからでしょうか? 振り向きもしなかった「家族」と言う将来の在り方を真剣に考えるようになったのは……。果たして後継者として時代が倅を認めてくれるでしょうか。
 先回の2001年12月号に、若い人材に「投資」、それが我々の生きて行くための「知恵」なんだと……。創意工夫・環境問題にも配慮した新しい創造的栽培形態、情報の発信や交流、そして人との出会いの大切さを述べさせて頂きました。農業と共生し真の豊かさを求めて行くのには、精神的にも豊かな若者を必要としている。農業を取り巻く時代の環境は、新しいリーダーを求めている。最近そんな気がしてなりません。

 私ども「こまちの里」では、秋田県特別栽培農産物認証制度「減農薬・無化学肥料栽培」にも挑戦しております。皆様方にご案内させて頂きました、「あきたこまちの無洗米」ならびに「特選米の無洗米」にも、どうかご期待して頂きたいと思っております。皆様方には安心できる美味しい「あきたこまち」をお届けできますよう、精進して参りますので、今後とも宜しくお願い致します。

今月の一句
弁当肥 思いも添えて 撒きおりぬ  明日旅立つ 早苗の箱に