第125  平成15年2月1日 発行

メンバーより一言  (大川 澄雄・ Sumio Okawa

 拝啓 春立つ頃となりました。でも北国におきましては、暦の上のことで ございまして、秋田はまだまだ雪の中、ホットな春を味わうのは三月からでは ないでしょうか。長い冬ゆえに、急に何処からかほっほっとした温みが押して来る、そんな "春の訪れ"移ろう季節の中で私は最も好き、全てが目醒めるようにほんのりとした明るさ に変わっていく。その中に動き出す生命の育み、素晴らしい自然の恵みゆく姿を感じます。
 これまでに「こまちの里だより」の俳句(本当に愚句ですが・・)に託した自然への想いを歳時記にこめてご紹介致したいと思います。

・ 納屋の窓 ほつりと赤し 雪の果て  
・小さき陽 雫の中に 春を呼ぶ
・ 雪間草 溶けむばかりの かたちかな 
・雪解田や 空一面の 碧をのむ
・ ありがたき 人の心や 春立ちぬ   
・長閑さや 光りの中に 田も畑も

 寒い北国でありますが、そこは自然なのでしょう。二月半ばを過ぎますと、雪は降ります が何処か温かい、すぐ解けそうな雪、雪が赤らむ感じさえ致します。作業する小屋から洩れる灯りが何となくほつりとして、「いよいよ雪も終わりだなー」と感じるのもこの頃です。
 気温が緩みますと一気に雪解け、見渡す限りの田んぼが一面水で溢れます。この頃になり ますと、もう日射しも潔くなり湖と化した田の面に映る紺青の空と真白な雲、くっきりと見 事です。その水も引き春の日が温かく射す頃、広大な田も畑も長閑な光の中に包まれます。 そして忙しい春作業に追われて行く季節でもあるのです。

・ 風花を 追って追われて 児の瞳  
・ 種選るや 幼子の手も 水にあり
・ 田も土も 息づきの音 春光る    
・ 陽炎や 笑うがごとし 田も畑も
・ 陽炎や 腰切れぎれに 農婦揺れ   
・ 嶺の雪 遠くにおして 昼餉かな

 ゆったりとした広い大潟村に、頬を真っ赤にした児童が走ってゆく。まるで風花を追いか けるように、追われるように・・・ぽつり、ふんわり落ちて来る風花、睫毛に付くことも、 でもすぐ消える。これも春光のあかしです。そしていよいよ塩水選、春作業の中で最も重要な種籾を選る仕事。でも塩水はとても冷たく、昔着膨れた幼子の可愛い手で種籾をかき回し た頃が本当に懐かしく想い出されます。田んぼの作業を始める頃、遠くの山々はまだまだ雪 に覆われています。でも田畑の地温が温かいため、すごい陽炎になるのです。遠くの雪嶺も ぼんやり揺らいで動きます。瞬きすると見失う程の陽炎です。田作業の人達も腰が切れる程 揺らぐのもこの季節。でも頑張って居座った山々の雪も自然には勝てず消えていきます。 日に日に狭くなっていく雪嶺を見ながらの昼餉、長閑な自然の中に生きる幸せを感じます。
 おっと、紙面がない・・・残念です。またの機会に春夏秋冬を俳句で追ってみることに致します。まだまだ春浅く寒さ厳しい如月、どうぞお元気でお過ごし下さいませ。   敬具
──空やさし 雲より洩れて 春覗く──こまちの里