10月号  平成12年10月12日 発行

メンバーより一言  太田 稔(おおた みのる)  
 「コケコ〜」と甲高い声が秋、早朝の澄み渡った空気を切り裂く。
我が家に今年の春からお目見えした雄の若鶏の鳴き声なのだが
何故か「コケコッコ〜」と鳴けない。ただ今練習中なのか、はたまたちょっと足りないのか、いずれ朝から「コケコ〜」は拍子抜けである。

 我が家では、かなり以前から自家用の採卵の為にニワトリを飼っているが、やはり有精卵が欲しいという事で、近所迷惑を承知で、雄鳥を一羽飼う事にした。庭には鶏小屋はあるにせよ、ほとんど野生に近い飼育方法のため普通のニワトリとは違ってちょっとおもしろい。餌箱の中に卵を産む癖のあるのもいれば、一生懸命飛ぶ練習をしてるのもいれば、毎日穴掘りに命を賭けてるようなのもいる。
 そんな中で初々しい雄の若鳥は、やっと成人(成熟)し、古株の雌鶏たちに囲まれ、いわばハーレム状態の中で一生懸命お仕事に精を出し、威厳を主張するが如く今日も「コケコ〜」と叫ぶ。

 さて話は変わるが、最近私には気になる人物がいる。身長156cm・体重40kg・スリーサイズは不明、おちゃめでシャイで可愛いが、泣き虫なのがたまにキズ...実は我が家の長男、小5の翔(かける)である。つい先日まで子供こどもしていた翔だが、最近急に大人びてきた。身長も、祖母を抜き妻を抜き、もうすぐ祖父をも超えようとしている。また、いつのまにかニキビが顔中に広がり、変声期を迎えたのか声も低音のガラガラ声になってきた。風呂から上がってきた裸の翔に「おぉ、ずい分立派になっちゃって....」と、股間に目をやる妻はのたまう。近頃私のタンスの中には、見覚えのある長男のトランクスやソックスなどが、しばしば混じる。そんな翔の急激な生長に、私は我が家の父親として、また男として喜びは勿論。だがそれ以上に複雑な心境に、戸惑いさえ感じる今日この頃。私も威厳を保つが如く、雄鳥のように「コケコ〜」とでも鳴きたい心境である。
 
 私の少年の頃、あだ名は"短足"と"チビ"だった。特に小学校低学年の頃、私の長ズボンを見て半ズボンと言われ、半ズボンをパンツだと言ってからかわれた。そして朝礼での私の「前ならえ」は常に両手を腰に...だった。そんな私の子供が今では後ろから数えて2番目になるまでに生長した。しかし、背は大きくても気は小さく長男特有のぼーっとした性格は相変わらず、闘争心など微塵もない。
 そんな翔ではあるが、野球部に入ってからというもの、幾ばくかの根性が身についてきたようだ。
 通称、鬼のコーチと囁かれている野球のコーチは、今では珍しくとてもスパルタ的で、げんこつや平手打ちは当たり前、虫の居所が悪い日はキャッチボールで玉を取り逃がすと即、学校一周(1.5キロ)。   
 疲れてくるとキャッチボールどころではなくなり、一球投げる毎に学校一周という過酷な練習で、最後は走る人間ばかりで球場には誰もいなくなる。そんな恐いコーチだけれども、子供達はとても尊敬しそしてよくなついている。やはり飴と鞭のさじ加減なのか...教育とは奥が深そうだ。
 先日も、あまりに帰りが遅いので聞いてみたところ、5年生チーム対6年生数人と4年生の合同チームとの対戦でボロクソに大負けし、あまりの悔しさに、その試合が終わってから夜の9時過ぎまで、球場の外灯の下で泣きながら素振りをしていたとの事。親バカの私の胸が、一瞬キュンとなりました。が、それも三日坊主で終わった事は言うまでもない。
 我が子よ、大きくそしてたくましくなれ。 ちょっとだけ私に遠慮しながら....。
──秋映えて 少年の声 空にあり──